4940.jpg
「私の作品を自由に使って!」著作権放棄の意思を示すためのツール「CC0」とは?
2015年06月15日 10時48分

映像や音楽、マンガなどのクリエイターが、自分の作品に関する著作権を放棄して、「自由に使ってかまわない」という意思を示すための新しいツールが注目を集めている。「CC0(シーシーゼロ)」と呼ばれるもので、日本語版が5月上旬、インターネットで公開された。

ネット時代の新しい著作権ルールを提唱する国際組織「クリエイティブ・コモンズ」が、このCC0を提供している。クリエイターは、CC0を使うことで、自分の作品をいわゆる「パブリックドメイン」で提供することを示すことができる。

これまでもクリエイティブ・コモンズは、クリエイターが「この条件を守れば、自分の作品を自由に使ってかまわない」という意思を示す「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC ライセンス)」の提供をおこなってきた。

今回公開された「CC0」は、どういう背景でつくられたのだろうか。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事をつとめる水野祐弁護士に聞いた。

映像や音楽、マンガなどのクリエイターが、自分の作品に関する著作権を放棄して、「自由に使ってかまわない」という意思を示すための新しいツールが注目を集めている。「CC0(シーシーゼロ)」と呼ばれるもので、日本語版が5月上旬、インターネットで公開された。

ネット時代の新しい著作権ルールを提唱する国際組織「クリエイティブ・コモンズ」が、このCC0を提供している。クリエイターは、CC0を使うことで、自分の作品をいわゆる「パブリックドメイン」で提供することを示すことができる。

これまでもクリエイティブ・コモンズは、クリエイターが「この条件を守れば、自分の作品を自由に使ってかまわない」という意思を示す「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC ライセンス)」の提供をおこなってきた。

今回公開された「CC0」は、どういう背景でつくられたのだろうか。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事をつとめる水野祐弁護士に聞いた。

●「クリエイターが著作権を放棄したくても、それが難しい法制度上の課題があった」

――今回公開されたCC0は、どんなときに利用するのか?

「CC0は、クリエイターなどの権利者が、自分の作品やデータベースなど(以下、合わせて『作品等』)を、誰でも自由に利用できる『パブリックドメイン』の状態で提供したいときに利用できます。

ほかの人は、その作品等を著作権法上の制約などを一切受けない状態で、自由に利用できます」

――どうして開発したのか?

「これまで、著作権の保護期間が終了していない作品等を『パブリックドメイン』の状態にすることは非常に困難でした。国や地域によっては、クリエイターなどの権利者が著作権を放棄したくても、できない状況でした。

この問題を解決するために、すべての著作権とそれに隣接または関連する権利を、簡便かつ徹底的に『放棄』できる汎用性を持ったツールとして、CC0を開発・提供することにしたのです。

クリエイティブ・コモンズがこれまで提供してきたCCライセンスと同様に、インターネット時代における作品等のスムーズな共有と、創造性豊かな環境、オープンなカルチャーを実現する目的があります」

――具体的にどうやって使うのか?

「インターネット上で、CC0を使いたいクリエイターなどの権利者は、CC0適用ツールを使います(http:/creativecommons.org/choose/zero/)。

必要事項を選択し、完了すると、HTMLコードが表示されますので、それをコピーして、自分のウェブページのソースに貼り付けます。このコードによって、CC0のマークが表示されます。

このマークがあることで、作品を見た人たちは、その作品がCC0であることがわかります。

これまでのCCライセンスでは、一番制約の少ない『表示(BY)』のライセンスであっても、作者名や作品名などを表示するという条件があります。しかし、クリエイターなどの権利者には、この『表示』の条件も外したいというニーズがあります。そのような『表示』を求めない権利者は、CC0を活用していただけると思います。

また、CC0が付いた作品を使いたい人は、ほかのパブリックドメインの作品と同じように、作者名や作品名などを表示しなくても、自由に利用することができます。

なお、CCライセンスと同様に、CC0も、インターネット以外でも利用することができます」

●「取り消すことができないので、十分な検討が必要」

――どの国でも利用できる?

「CC0は、世界共通の文面を使用しており、各国語に翻訳されています。それぞれの翻訳が正式版として効力を持つ『世界標準』のツールです。

法律にくわしくなくても、利用条件を一見しただけで、はっきり理解できるものになっています。世界中の人に、同じ条件で、簡便に使ってもらえるのが、CC0の大きなメリットの一つです」

――具体的には、どんな使用例があるのか?

「たとえば、米ハーバード大学や英科学誌『Nature』による、出版物のメタデータ(書誌データ)をオープンデータ化するなどの取り組みがあります。ほかにも、『Safecast(セーフキャスト)』の放射線量データなどがあります。

また、EUの文化資源アーカイブとして知られる電子図書館『Europeana(ユーロピアナ)』や、世界最大の写真共有サービス『Flickr(フリッカー)』でも採用されています。

最近では、日本のハードウェア・スタートアップ『exiii(イクシー)』が、筋電義手『HACKberry』(http://exiii-hackberry.com/)のソフトウェアやデザインデータをオープンソースにして、公開しました。私もサポートさせていただいた事例ですが、このプロジェクトでもCC0が活用されています」

――利用する際に注意すべき点はあるのか?

「主な注意点としては、自らがすべての権利を有している作品等にしか、適用できないことがあります。

また、CC0を使うと、その作品等について、著作権および関連する権利の一切を永続的に放棄してしまうことになります。したがって、取り消すことができなくなるので、十分に検討したうえで利用する必要があります」

CC0の詳細は、クリエイティブ・コモンズのウェブページ(http:/creativecommons.org/choose/zero/)で確認できる。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る